16/I/2018


V-3  Cavalli di San Marco  サン・マルコの馬








要約  Summary


1【現所在】

ヴェネツィア、サン・マルコ寺院(Basilica di S. Marco)。所蔵番号不明。現在オリジナルはバジリカの中に移管され、ロッジャ/テラスには現代のブロンズ・コピーが置かれている。


2【来歴】

1204年、第四次十字軍の際、ヴェネツィア軍によってコーンスタンティーノポリスのミリオン(競馬場)からヴェネツィアに運ばれた。

 コーンスタンティーノポリスから同時期に齎されたものには貴石を鏤めた「パラ・ドーロ」がある。現在祭壇の前に置かれている。[バルレッタの巨像][B] はヴェネツィア軍が帰路途中で嵐に遭い、バルレッタの海岸に置き去りにしたもの。


3【寸法】

A」(向かって一番左)の寸法(Cavalli 1977, 249)。

 高さ: 240cm

 背峰(両肩の間の隆起)までの高さ:171cm

 幅:90cm

 長さ:260cm


4【科学的調査】

合金分析

(1) Klaproth 1815?

Cu 99.30%, Sn 0.70%, Pb -, Sb -, Ag -, Fe -

(2) Darcet 1815?

Cu 99.18%, Sn 0.82%, Pb -, Sb -, Ag -, Fe -

(3) Bussolin 1842

Cu 98.75%, Sn 1.00%, Pb 0.20%, Sb -, Ag 0.05%, Fe -

(4) Barigozzi 1908

Cu 92.00%, Sn 7.10%, Pb 0.45%, Sb -, Ag -, Fe -

 

(5) Leoni 1977, 205, tabella 1

A 頭部・試料1

Cu 98.12%, Sn 0.77%, Pb 0.55%, Sb 0.15%, Ag 0.006%, Fe 0.022%

A 頭部・試料2

Cu 96.67%, Sn 1.31%, Pb 1.16%, Sb 0.25%, Ag 0.005%, Fe 0.13%

A 胴体・試料3

Cu 97.65%, Sn 0.95%, Pb 0.98%, Sb 0.17%, Ag 0.009%, Fe 0.023%

A 胴体・試料4

Cu 96.95%, Sn 1.22%, Pb 1.14%, Sb 0.21%, Ag 0.015%, Fe 0.19%

A 首輪・試料5

Cu 98.35%, Sn 0.39%, Pb 0.11%, Sb 0.90%, Ag traccia, Fe assente

B 胴体

Cu 97.22%, Sn 1.22%, Pb 1.04%, Sb n.d., Ag n.d., Fe 0.10%

 

 ほぼ純銅で、錫も鉛も殆ど不純物でしかない。


5【制作技術】

間接失蠟鑄造法。


6【主要文献】

Crome 1963: Johann Friedrich Crome, «Die goldenen Pferde von San Marco und der goldene Wagen der Rhodier», BCH (Bulletin de Correspondance Hellénique), 87, 1963, 209-228, Taf.I-VII.

【コーンスタンティヌーポリスに関する古文献に基づいて、四頭の馬を、コーンスタンティヌーポリスのミリオンに置かれていた太陽神の馬車と同定する。これはもと、デルフィのアポッローン神域の、アテーナイ人がプラタイアイの戦勝に感謝してアポッローンに捧げた金製の三脚の隣の、高い基台の上に置かれていた。これはロドス人の奉納品であり、リューシッポスの制作した四頭立ての馬車(Plin.34.63)がこれである。ロドス人はこれを前304年にデーメートリオス・ポリオルケーテースに対する勝利を祝って立てた。他方ロドスに立てられた記念物がロドスの巨像である。】

Leoni 1967: M. Leoni, «Indagini metallografiche sui cavalli bronzei della Basilica di San Marco di Venezia», Enciclopedia della Scienza e della Tecnica, 68 (1967), 392-393, caption to fig.3.

【馬の身体に見られる掻き傷は金泥棒の仕業ではなく、鍍金表面の扁平な輝きを緩和するために、制作者によって意図的に施されたものである。──ゲーテが『イタリア紀行』に記した想像は間違い。】

Becatti 1971: Giovanni Becatti, «Interrogativi sul problema dei cavalli di San Marco», RendPontAcc, XLIII, 1970-71 (1971), 203-206.

【ルヌーラを考慮に入れ、コーンスタンティーヌス帝の時代と考える。手本はCrome 1963のいうリューシッポスによるデルフィの馬とも考えられるが、鍍金を施されない手本から直接型を取る再鑄である。】

Magi 1971: Filippo Magi, «La data dei cavalli di S. Marco», RendPontAcc (Atti della Pontificia Accademia Romana di Archeologia, Rendiconti), XLIII, 1970-71 (1971), 187-201.

【馬の目の瞳孔に半月形の溝を掘って生命感を付与している。この工夫はルヌーラ(lunula)と呼ばれ、紀元2世紀中頃に使われ始め、コーンスターンティヌス帝の頃、紀元4世紀初めには普通のこととなっていた。従って馬の鑄造と鍍金は紀元3世紀後半から4世紀に行われた。】

Magi 1972: Filippo Magi, «Ancora sulla data dei cavalli di San Marco», RendPontAcc, XLIV, 1971-1972 (1972), 209-217.

【耳の縁に繊毛が表され、中心が割れている。これはマルクス・アウレーリウスの馬にも見出されるので、サン・マルコの馬が紀元2世紀に制作された可能性もある。】

San Marco 1977: Guido Perocco (a cura di), I Cavalli di San Marco (cat.Venezia), Milano 1977.【修復後の展覧会の図録。】

San Marco 1981: Guido Perocco, Renzo Zorzi (a cura di), I Cavalli di San Marco, Venezia 1977; 1981 (Edizioni di Comunità).【修復研究報告書。】



詳細  Details