18/XII/2018


Θῆβαι  テーバイ神話群


【テーバイ神話群】

テーバイ神話(伝説)群を時代順に要約する。

 

エウローペーEurope、カドモスKadmos、スパルトイSpartoi

 シュリアーSyriaのテュロスTyrosの王アゲーノールAgenorは、娘エウローペーEuropeを牡牛の姿のゼウスZeusに連れ去られ、三人の息子カドモスKadmos、フォイニクスPhoinix、キリクスKilixにエウローペーを探すように命じた。カドモスはデルフォイDelphoiで神託を受け、月の印を付けた牝牛の跡を追ってテーバイThebaiに着き、その地で龍を退治した。アテーナーAthenaに教えられてその龍の歯を地に蒔くと戦士たちが現れて互いに戦い、その中の五人が生き残った。カドモスはこの五人を従えてテーバイ王家の祖となり、戦士たちとその子孫は「スパルトイ/蒔かれた人々」と呼ばれ、槍の穂先の形の斑文をつけて生まれた。

 

カドモス、ハルモニアーHarmoniaの首飾り

 カドモスはハルモニアーHarmoniaを妻とし、テーバイの砦カドメイアーKadmeiaに住んだ。その結婚式に神々が様々な贈り物をしたが、その中にアテーナーのペプロスπέπλοςと、ヘーファイストスHephaistosが贈った首飾りがあった。この首飾りはヘーファイストスが、妻のアフロディーテーAphroditeとアレースAresとの不倫から生まれたハルモニアーを憎んで与えたもので、これがカドモス一族に累代の災いを齎すことになる。カドモスの娘たちイーノーIno、セメレーSemele、アガウエーAgaue、さらにアウトノエーAutonoeの子アクタイオーンAktaionと、アガウエーの子ペンテウスPentheusも、不幸な結末を迎える。

【アガウエー、ペンテウスエウリーピデースEuripides「バッカイBakchai」】

 

ラーイオスLaios、ペロプスの呪い

 (カドモスの孫)ラブダコスLabdakosの子ラーイオスLaiosは、アンフィーオーンAmphionとゼートスZethosに国を追われ、ペロプスのもとに身を寄せた。ペロプスの子クリューシッポスChrysipposに恋して誘惑し、同性愛を行った最初の人物となる。ペロプスは、ラーイオスが自身の息子によって殺されるように呪いをかけ、へーラーHeraも、その呪いがデルフォイDelphoiの神託によって確実になるように図る。ラーイオスはイオカステーIokasteとの結婚後も、神託を恐れて妻と床をともにしなかったが、あるとき酒に酔って戒めを破り、一子を得る。その子は足に鉄串を通してキタイローンKithaironの山中に捨てられたが、羊飼いが拾い、コリントスKorinthos王ポリュボスPolybosによって育てられた。子は、足が腫れていたことからオイディプースOidipousと呼ばれた。

 

オイディプースOidipous、ラーイオス殺害

 オイディプースはコリントスKorinthos王ポリュボスPolybosと王妃の子として育てられたが、あるとき宴席で私生児と罵られて悩み、真実を知るためにデルフォイに行き、そこで「父を殺し母と結婚する」という神託を得、コリントスには帰らない決心をする。テーバイThebaiに向かう三叉路にさしかかった時、老人の乗った車と出会い、道を譲れ譲らぬで争いになり、一人を除いて一行を皆殺しにした。その老人こそ父親のラーイオスで、神託を逃れようとして実はそれを実現してしまう。

 

オイディプース、スフィンクス退治

 オイディプースがテーバイにやってくると、人々は、ラーイオスの罪を罰するためにへーラーHeraが遣わしたスフィンクスSphinxの災いに苦しめられていた。怪物は謎に答えられない人々をむさぼり食らっていたが、オイディプースがその謎を解くと、怪物は死んでしまう。オイディプースはテーバイの解放者として迎えられ、死んだラーイオスの代わりに王位に就き、王妃イオカステーを妻とする。

 

オイディプース王、オイディプースの呪い

ソフォクレースSophokles「オイディプース王」】

 

テーバイThebaiを攻める七人

 オイディプースが王位を去ったあと、クレオーンKreonが王位を代行する。オイディプースの二人の息子は成人すると互いに王位を争い、一説では一年交替で王位に就くことを取り決め、先にポリュネイケースPolyneikesがテーバイ王となる。一年の期限が過ぎるとエテオクレースEteoklesに地位を譲るが、その際ポリュネイケースは財宝とともにハルモニアーHarmoniaのペプロスπέπλοςと首飾りを持ち去る。他方エテオクレースも期限が来ても王座から降りようとしない。

 怒ったポリュネイケースはアルゴスArgosに赴く。アルゴス王アドラストスAdrastosの王宮の前で偶然、カリュドーンKalydonを追われてきたテューデウスTydeusと出会い、争うが、王アドラストスはその二人が神託で予言された猪と獅子であると解し、二人はその娘たちの婿になる。ポリュネイケースとテューデウスは王の援けを得て、他の五人の将軍たち(カパネウスKapaneus、エテオクロスEteoklos、ヒッポメドーンHippomedon、パルテノパイオスParthenopaios、アンフィアラーオスAmphiaraos、或いはメーキステウスMekisteus)とともに、王位への権利を要求して七つの城門を持つテーバイを攻める。

アイスキュロスAiskhylos「テーバイを攻める七人」エウリーピデースEuripides「ヒケティデスHiketides」「フォイニッサイPhoinissai

 

コローノスKoronosのオイディプース

ソフォクレースSophokles「コローノスのオイディプース」】

 

七将の敗北

 アルゴスArgos軍はテーバイThebaiを包囲する。譲位を説得する使者としてテューデウスTydeusが単身入城するが、エテオクレースEteoklesが応じなかったため、テューデウスは皆に一騎打ちを挑み、全員に勝った。これを恨んだテーバイ人たちは待ち伏せたが、テューデウスは一人を除いて全員を殺す。戦闘が開始されてアルゴス勢が猛攻を加える。テーバイ人たちがテイレシアースTeiresiasの意見を求めると、テーバイの勝利のためにはクレオーンKreonの息子メノイケウスMenoikeusの犠牲が不可欠という。クレオーンは息子を逃がそうとするが、メノイケウスは城壁の上で自ら命を絶ち、国のために犠牲となる。

 七人の将軍たちはアドラストスAdrastos以外みな戦死を遂げる。カパネウスKapaneusは梯子を使って城壁を乗り越えようとしてゼウスZeusの雷を受けて死ぬ。アンフィアラーオスAmphiaraosは、ゼウスの雷霆によって引き裂かれた大地に、戦車と馭者もろとも飲み込まれる。エテオクレースEteoklesとポリュネイケースPolyneikesは相討ちで果てる。アルゴス勢は敗走し、アドラストスAdrastosは辛うじて逃げ帰る。

アイスキュロスAiskhylos「テーバイを攻める七人」エウリーピデースEuripides「ヒケティデス」「フォイニッサイ」

 

アルゴス側の遺体の埋葬禁止、アンティゴネーAntigone

 クレオーンKreonがテーバイThebai王位を継承し、アルゴスArgos側の死骸の埋葬を禁じる。アンティゴネーAntigoneは密かに葬礼を行い、捕えられて獄中で自殺する(または、死刑に処せられる)。アドラストスAdrastosの要請を受けたアテーナイAthenai王テーセウスTheseusは、テーバイThebaiに来てアルゴスArgos人たちの葬礼を行う。

アイスキュロスAiskhylos「テーバイを攻める七人」ソフォクレースSophokles「アンティゴネーAntigone」エウリーピデースEuripides「フォイニッサイPhoinissai」】

 

テーバイを攻めるエピゴノイEpigonoi(子孫たち)

 十年後、七将の子どもたちであるエピゴノイEpigonoiは、復讐のため再びテーバイを攻める。(アンフィアラーオスAmphiaraosの子)アルクマイオーンAlkmaionとアンフィロコスAmphilochos、(アドラストスAdrastosの子)アイギアレウスAigialeus、(テューデウスTydeusの子)ディオメーデースDiomedes、(パルテノパイオスParthenopaiosの子)プロマコスPromachos、(カパネウスKapaneusの子)ステネロスSthenelos、(ポリュネイケースPolyneikesの子)テルサンドロスThersandros、或いは(メーキステウスMekisteusの子)エウリュアロスEuryalos

 アルクマイオーンAlkmaionは母エリフューレーEriphyleを殺して出征し、帰国後エリーニュースErinysに追われる。

 

 以上、テーバイ神話群には三つの呪いが関わっている。ハルモニアーHarmoniaの長衣と首飾りの呪い。ペロプスPelopsの呪い。オイディプースOidipousの呪い。


【テーバイ神話群の主要人物一覧】

印は「エイコネス」に独立した章があるもの。

 

(1) アゲーノールAgenor 

 (2) エウローペーEurope 

 (3) カドモスKadmos 

  (4) ハルモニアーHarmonia 

 

(5) ラーイオスLaios 

(6) イオカステーIokaste(ラーイオス/オイディプースの妻)

 (7) オイディプースOidipous(ラーイオスとイオカステーの子)

(8) テイレシアースTeiresias 

(9) スフィンクスSphinx(テーバイの)

 

(10) アンティゴネーAntigone(オイディプースとイオカステーの娘)

(11) イスメーネーIsmene(オイディプースとイオカステーの娘)

(12) クレオーンKreon(イオカステーの兄弟)

 (13) ハイモーンHaimon(クレオーンの子)→Antigone

 (14) メノイケウスMenoikeus(クレオーンの子)

(15) エテオクレースEteokles(オイディプースとイオカステーの子)

 

(16) Septem 七将

 (17) エピゴノイEpigonoi(七将の子どもたち)

(18) アドラストスAdrastos 

 (19) アイギアレウスAigialeus →Epigonoi

(20) ポリュネイケースPolyneikes(オイディプースとイオカステーの子)

 (21) アルゲイアーArgeia(アドラストスの娘、ポリュネイケースの妻)

 (22) テルサンドロスThersandros(ポリュネイケースとアルゲイアーの子) →Epigonoi

(23) テューデウスTydeus 

 (24) ディオメーデースDiomedes(テューデウスの子)

(25) カパネウスKapaneus 

 ▲(26) エウアドネーEuadne(カパネウスの妻)→Kapaneus

 (27) ステネロスSthenelos(カパネウスとエウアドネーの子) →Epigonoi

(28) エテオクロスEteoklos →Septem

(29) ヒッポメドーンHippomedon →Septem

(30) パルテノパイオスParthenopaios 

 (31) プロマコスPromachos →Epigonoi

(32) アンフィアラーオスAmphiaraos 

 (33) エリフューレーEriphyle(アンフィアラーオスの妻)

 (34) アルクマイオーンAlkmaion(アンフィアラーオスとエリフューレーの子)

 (35) アンフィロコスAmphilochos(アンフィアラーオスとエリフューレーの子) →Epigonoi

(36) メーキステウスMekisteus 

 (37) エウリュアロスEuryalos →Epigonoi


【フィロストラトスにおけるテーバイ神話群】

 

 テーバイ神話群の中核的人物はオイディプース。『エイコネス』にはオイディプースそのものを扱った絵画はなく、テーバイ神話群としては「I.4メノイケウス」「I.27アンフィアラーオス」「II.29アンティゴネー」「II.30エウアドネー」がある。

 時系列で並べても「I.4メノイケウス」「I.27アンフィアラーオス」「II.29アンティゴネー」「II.30エウアドネー」となり、現在の配列順と一致する。

 メノイケウスはクレオーンの子。アンフィアラーオスは、(オイディプースの子)ポリュネイケースとともにテーバイを攻める七将の一人。アンティゴネーはオイディプースの娘。エウアドネーは、七将の一人カパネウスの妻。

 以上4人は自分の死を予知しながら出征する(アンフィアラーオス)、或いは国のために自分を犠牲にする(メノイケウス)、または自殺する(アンティゴネー、エウアドネー)。自殺または事実上自殺に等しい死を遂げるという点で共通する。