古典の翻訳、註解、解説。
・訳文は原テクストの精確な解読。
・解説はいくつかの基本問題についてより高所から視野を広くとって考察するもの。『エクフラシス集 Ekphraseis』にとっての基本問題は「Philostrati の人と作品」「大 Philostratos の基本語彙」「Eikones I-II における色彩」「Eikones I-II の構成──神話記述 Mythography としてのEikones I-II」「記述 ekphrasis に基づく絵画の構図推定・年代推定・再現」「後世の受容──Vigenère, Goethe, Tiziano」など。
・註解は訳文と解説が出会い訳者の本領が切実に発揮される場所。読者にとってはここが最も美味しい部分。これがない或いはおざなりなものは話にならない。とりわけ『エクフラシス集 Ekphraseis』にあっては他の古典と異なり図版の取捨選択およびその説明が註解の主要な位置を占める。
・この三者はまとめの段階だけでなく不断に、総合的に再検討され調整される。解説も浅く通り一遍で註解も語釈にとどまる翻訳は学術書とは見做されない。いずれにおいても明らかな誤りが多いものは論外。
西洋古典叢書も玉石混淆で、一応訳して研究書を適当に要約した程度のものとまさに精魂傾けて調べ盡し考え盡した末に完成したものとの間でさまざまなグラデーションがある。概して最近のものは初期のものに比べると遙かに学術的価値が高いものが多い。私がよく参照しているものでは小川洋子『テオプラストス/博物誌』1-3、内田次信・戸高和弘『ルキアノス全集6』が精魂派。一応派については口を噤んでおくのが賢明だろう。
