・久しぶりに Euripides, Hippolytos を読んだ。Eikones, II.4 Hippolytos で描かれるその凄惨な死の情景が Euripides の描写を踏まえていると指摘されており、その検証のため。
・でもそれだけで済まず全体を読み直すことに──
川島重成 訳・解説 =岩波「ギリシア悲劇全集」5「エウリーピデース」1990
丹下和彦 訳・解説 =西洋古典叢書「エウリピデス悲劇全集」1, 2012
西村賀子 訳・解説 =岩波「ギリシア悲劇全集」11「ソポクレース断片」1991
久保田忠利 訳・解説 =岩波「ギリシア悲劇全集」12「エウリーピデース断片」1993
W. S. Barrett, Euripides, Hippolytos (1964)
James Diggle, Euripidis Fabulae I (OCT), 1984, 1991
David Kovacs, Euripides II (Loeb), 1995; 2005
Pascale Linant de Bellefonds, s.v. Hippolytos I (LIMC V), 1990
・Euripides, Hippolytos kalyptomenos(顔を覆う Hippolytos)~ Sophokles, Phaidra; Euripides ~ Hippolytos stephanēphoros(花冠を捧げる Hippolytos: 前428年)という上演順が想定されており、Sophokles を挟んで Euripides の2作間で Phaidra は「強い Phaidra」(Hippolytos に直接愛を告白する)から「弱い Phaidra」(沈黙と名誉)へと大きく変化したが、Hippolytos は両作で変わらず惨死の場面も同じだったと推定されるようだ。
・西村によると(p. 304)[Phaidra が乳母を通して渡した手紙を Hippolytos が捨てる場面を描いたローマ時代のいくつかの美術作品は、おそらく Sophokles の劇に基づくものと考えられる。]
・丹下の結びの言葉(p. 482)[Euripides が当時の劇審査機構をどの程度信頼していたか不明である。しかしこの改作で優勝を果たしたことには密かに快哉を叫びほくそ笑んだことだろう。それは目論見どおり Phaidra 像を〈名誉〉と〈沈黙〉を旨とする姿に作り替えたことが功を奏したと思われたからである。しかしそれが彼の最も描きたかった Phaidra 像であったかどうかは疑問である。]
LIMC Hippolytos I 35*
Cypros, Nea Paphos, Maison de Dionysos. 2e moitié du IIIe s. ap. J.-C.
Phaidra が乳母の仲介なしに直接 Hippolytos に愛を告白する場面と解される.
(左から) 犬 (Hippolytos の方を振り返る); Hippolytos (正面観. 向かって右の Phaidra の方を向く. 左肩から下がる紅紫色の himation 以外は裸. 左手に槍= Artemis を崇拝し狩獵を好む. 橫に伸ばした右手に tabella / πινάκιον 蠟書板を持つ); Phaidra (玉座に座る. 着衣, 頭上にヴェール. 右肘を玉座の背凭れにかける. 顔を Hippolytos の方に傾ける); Eros (飛翔. 振り返りつつ右方に遠ざかる. 左手に弓. 右手に持つ火のついた松明を下方に向ける=死を暗示).
*この場面はおそらく Euripides の第一作 (Hippolytos kalyptomenos) に基づく.

