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Tabulae Iliacae

 

 川島重成ほか編『ホメロス「イリアス」ヘの招待2019/3 の刊行を契機に、ICU 界隈ではギリシア叙事詩に対する関心が高まっている(ような気がする)。この状況に鑑み、第3学期「西洋古典文学 III」は予定を変更し、

Michael Squire, The Iliad in a nutshell: Visualising Epic on the Tabulae Iliacae, 2011, 2012 (rev. ed.), Oxford UP を講読する。講義+ゼミ。必携文献は『イーリアス』『オデュッセイアー』(呉茂一、松平千秋、ほか。呉訳の方が原文の行番号との照合が容易)。「叙事詩の環」については Malcolm Davies, The Greek Epic Cycle, 2003 (2nd ed., Bristol Classical Press); The Aethiopis: neo-neoanalysis reanalyzed, 2016 (Harvard UP)

 

 講読文献は500頁の大冊だが、全部読む必要はない。最低限 Appendices (pp. 387-416) だけでいい──なわけはないが、講義で各章の議論を要約するので、面白そうな箇所に目を通してほしい。代表的な Tabula Iliaca (Musei Capitolini) については 2018/の Kassandra に関する講義でも扱ったが、Ch. 4 (pp. 127-196) ではそれが詳しく分析されている。「Achilleus の楯」については Ch. 7 (pp. 303-370) で扱われている。

 Tabulae Iliacaeに 2012 年改訂版の pdf を一冊まるごとアップした(なお ICU 図書館に入っているのは 201年版。異同については確認していない)。Appendices に基づき、遺品(計 23 点)ごとに主要データと図版をまとめるなどの加工も施してある。ただ著作権の問題を避けるためパスワードでブロックしている(パスワードはこれまでと同じ)。原書は密林で 5,000 円ほどで新本を入手できる。

 なお私の都合で日時も水曜 5限から土曜 2限(10:1012:40)に変更した。教室は総合学習センター I-231

例年より登録者が減ることが予想されるが、ICU では一人でもいれば実施することになっている。ともあれ講読書は Ekphrasis, Text and Image の隠れた必読文献だ。Ilias を始めとする叙事詩全体に斬新な光を当ててくれる。

 (10/4 一部加筆)